超高齢社会におけるフレイルの意義

荒井 秀典
国立長寿医療研究センター 副院長

 少子高齢化により、現在高齢者人口は25%を超えており、約10年後の2025年には75歳以上の後期高齢者が2000万人を超えると推定されている。このような人口構成の変化を示すわが国においては、さらなる健康寿命の延伸が求められている。我が国の健康寿命は男性で約9年、女性で約13年平均寿命より短く、介護を必要とする期間は依然として長い。したがって、いかに要介護状態に陥らないようにし、健康寿命を延伸するかが、超高齢社会である日本に課せられた喫緊の課題である。
 加齢に伴い、様々な疾病への罹患が増えるが、同時に臓器機能が徐々に低下し、生理的な予備能が減少する。65歳以上75歳未満の前期高齢者と75歳以上の後期高齢者を比較すると、後期高齢者においては加齢による様々な生理的予備能の衰えにより、外的なストレスに対する脆弱性が高まり、感染症、手術、事故を契機として要介護状態に陥ることが増えてくる。このように、加齢とともに環境因子に対する脆弱性が高まった状態が「フレイル」であるが、もともと虚弱と訳されていた概念である。平成26年5月当学会から、Frailtyの日本語訳として、新たに提唱したのがフレイルである。その理由としては、加齢に伴う身体機能の衰えは不可避的なものではあるが、適切な介入がなされれば、要介護に至ることが予防でき、健常な状態に戻る可逆性を有するためである。すなわち、「虚弱」では、可逆性などの性質と相反する印象を与えかねないために、カタカナ表記とした。フレイルは、高齢者の生命・機能予後の推定や包括的医療を行う上でも重要な概念であり、介入可能な病態であることから高齢者の健康増進を考える上では、すべての国民が理解すべき概念である。本プレスセミナーでは、その概念、病態生理、適切な介入方法などについて述べたい。

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