地域高齢者の栄養に関する諸問題

葛谷 雅文
名古屋大学大学院医学系研究科 地域在宅医療学・老年科学 教授

 高齢者の栄養問題を考える際、もちろん、過栄養対策(メタボ対策)は重要ではあるが、今後ますます増加することが予測されている高齢者、特に後期高齢者では低栄養の対策が大変重要である。高齢者では成人とは異なる低栄養につながる様々な要因が存在している。しかし、高齢者医療の現場では基本的な栄養状態の評価すらされていないことが多い。
 低栄養が存在すると高齢者にとって様々な健康障害に直結する。生命予後(死亡)は究極の健康障害であるが、体格指数(body mass index, BMI) と生命予後との関係は多くの報告があり、もっとも総死亡率が少ないBMIは成人に比較し高齢者ではより高い値であることが報告されている。日本人に限った解析においても、死亡リスクのもっとも低い70歳以上の日本人高齢者のBMIは22.5~27.4kg/m2とされている。もちろん、この値は成人よりも高値である。したがって、高齢者の栄養状態または肥満を考える時にも成人と同様な基準でよいかを今後考える必要性がある。
 高齢者の低栄養対策は二つのフェーズを考える必要がある。第1フェーズは健康寿命の延伸で最近注目されているフレイル予防に関することで、低栄養、たんぱく質摂取量、ある種の栄養素の問題が重要視されている。第2フェーズは要介護状態に至ってからの低栄養対策である。低栄養に至る要因は様々であるが、摂取エネルギー自体の減少が大きな問題と思われる。このフェーズの多くは咀嚼・嚥下障害が併存している場面が大変多い。
 いずれにしろ、高齢医療の現場で定期的な栄養評価が実施され、問題に対して早い対応が望まれる

セミナーTOPへ 次のセミナーへ >>