在宅高齢者の嚥下障害とその対応

藤谷 順子
国立研究開発法人国立国際医療研究センター
リハビリテーション科 医長

 安全に食事をする嚥下機能は、姿勢の保持、口まで運ぶ機能、口腔内での適切な咀嚼のための運動と感覚機能、気道に入れず食道に入れるための嚥下反射、誤嚥した場合でも喀出できる力など多数の複合的な能力が必要であり、脳から神経・筋肉の神経回路だけではなく、歯と咬合、そして筋肉のボリュームとパワーが必要である、高齢者では気づいていなくてもこれらの機能が低下しつつあり、低栄養や咀嚼機能障害によりさらに悪循環に陥り、誤嚥性肺炎で発症して初めて、嚥下障害を指摘されることになる。誤嚥性肺炎の発症自体が体力の消耗・臥床・入院などで嚥下機能やADLなどさまざまな高齢者の機能を悪化させる要因にもなる。
 在宅高齢者の中には、すでに、脳卒中による嚥下障害や、誤嚥性肺炎退院後で嚥下障害が明らかな症例があり、そのような方々への、医療・介護・福祉などの連携したチームアプローチは必要である。また、自覚しないでいる嚥下機能の低下を、低栄養や咀嚼障害とともに、気づいてもらい、改善させたり、悪化を予防したりする取り組みも、重要である。
 前者については、入院医療機関からの退院後の地域連携、あるいは地域で療養継続のために病院の検査機能や専門家を活用するなど、病院をも巻き込んだ地域包括ケアが望まれる。後者のためには、近年は地域自治体の保険計画として啓発活動が行われているところもあり、今後も、地域自治体保健関係者や、機能低下を相談された際に的確に対応できるためのかかりつけ医への情報提供など、多角的な対策が望まれる。

<< 前のセミナーへ セミナーTOPへ