来たるべき心不全パンデミックにどう備えるか?

大石 充
鹿児島大学 心臓血管・高血圧内科学 教授

 超高齢社会の到来とともに疾患構造も変化してきている。80歳代では心不全の罹患率が急増し、団塊の世代が80代を迎える2030年には心不全患者が溢れかえる「心不全パンデミック」が到来すると考えられている。我々ができることは何か? それに答えを出してくれたのがSPRINT試験ではないだろうか? 厳格な降圧が心不全罹患率を大幅に減らすことを見事に証明した。しかしながら優秀な降圧薬が数多くあれど、降圧目標達成率は30-40%であり、その割には医師の満足度が極めて高いというHypertension Paradoxという現象も示されており、心不全パンデミック阻止には降圧薬を効率的に使っていかに降圧目標を達成するかが極めて重要である。血圧は循環血液量と末梢血管抵抗の積で表され、循環血圧陵を減少させる減塩・利尿薬投与と末梢血管抵抗を減弱させるCa拮抗薬の投与を病態に応じて行うという基本に戻るべきである(図1)。また高齢者特有の問題、特にフレイル・サルコペニアや認知機能の問題も心不全パンデミック阻止には大変大きな壁となっている。このような問題点は日常臨床でマスクされてしまうことが多く、老年医学的視点から問題点を確実に見いだして、網羅的・全人的に対処をする必要がある。しかしながら一番の問題点は医師の意識である。降圧目標に達していないと言っても、収縮期血圧160-170mmHgのまま放置しているわけではない。140mmHg未満まで降圧すべきところが145-6mmHg程度まで降圧されたとことで「まあ、いいかなぁ。ちょっと様子を見ましょうか」となり降圧の手が緩まってしまう。この積み重ねが降圧目標達成30-40%となってしまうのである(図2)。心不全パンデミックを決して起こさないためにも、確実な降圧を目指して医師とメディカルスタッフと患者が共通の認識と目標を共有して頑張らなければならない。

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