超高齢社会における脂質異常症の管理

横手 幸太郎
千葉大学大学院医学研究院 細胞治療内科学講座 教授

 わが国で高齢者が寝たきりや要介護になる原因の半分は動脈硬化性疾患や生活習慣病に起因する。動脈硬化は脳梗塞や心筋梗塞、末梢動脈疾患などをもたらし、生命とQOLを脅かす。脂質異常症は、糖尿病や高血圧、喫煙などと並ぶ動脈硬化の主要な危険因子である。コレステロールは、本来動物の身体に無くてはならない脂質だが、血液中にLDLコレステロールとして過剰になると、動脈硬化をもたらす。トリグリセライド(中性脂肪)の増加も動脈硬化を促進し、逆にHDLコレステロールの増加は動脈硬化抑制的に働く。高LDLコレステロール血症に対しては、飽和脂肪酸やコレステロールの制限、高トリグリセライド血症にはアルコールや糖質の制限が有効とされている。但し、高齢者において、いたずらに栄養素を制限することは却ってサルコペニアや低栄養を招く懸念があり、患者の状態や動脈硬化リスクに応じた栄養指導が大切である。生活習慣の改善で効果が不十分な場合に薬物治療を考慮するが、高LDLコレステロール血症にはスタチンやエゼチミブ、高トリグリセライド血症に対してはフィブラートや多価不飽和脂肪酸製剤が選択される。高齢者は複数の疾患を合併することが多く、しばしば複数の診療科を受診するため、処方薬剤の増加、すなわちポリファーマシーに陥りやすい。したがって、投薬にあたっては、その必要性を十分に吟味し、重複や薬物相互作用に注意、常に減薬を意識することが望ましい。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版(2017年7月に改訂の予定)では、高齢者の脂質異常症管理について、75歳未満の前期高齢者は若年者と同じ考え方に基づく治療を推奨している。75歳以上の後期高齢者については、二次予防におけるスタチン治療の有効性は示されているものの、一次予防のエビデンスは十分でなく、個々の患者に応じた主治医の判断が尊重される。

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