認知機能低下とフレイルを考慮した高齢者糖尿病の治療

荒木 厚
東京都健康長寿医療センター 糖尿病・代謝・内分泌内科 内科総括部長

 加齢とともに糖尿病の頻度が増加し、70歳以上では人口の20%前後となっている。こうした高齢者糖尿病の増加で問題となるのは、インスリン注射などができない認知症やフレイル・ADL低下を伴った患者が増え、家族や社会のサポートが必要になることである。
 糖尿病患者は糖尿病がない人と比べてアルツハイマー病が約1.5倍、血管性認知症が2.5倍おこりやすい。また、糖尿病では記憶力や実行機能(物事の段取りをうまくやる能力)が低下するために、服薬やインスリン注射がうまくできず、高血糖となる。高血糖、重症低血糖、動脈硬化性疾患、低栄養は認知症発症の危険因子となる。早期に認知機能障害を発見し、運動療法、心理サポート、社会資源の確保などを行うことが大切である。
 フレイルは加齢に伴って予備能が低下し、要介護や死亡に陥りやすい状態である。糖尿病はフレイルをきたしやすい疾患である。身体活動量低下、低栄養、高血糖、低血糖、合併症などが糖尿病でフレイルをきたしやすくする要因である。
 糖尿病におけるフレイル対策には運動療法、食事療法、薬物療法がある。運動療法はレジスタンス運動や多要素の運動を行うことが大切である。食事療法では、筋肉の量や機能を維持するためにタンパク質を多く摂取する。ビタミンやミネラルを含む野菜の十分な摂取も勧められる。また、極端なエネルギー制限を避けて、体重減少を避けることも大切である。
 薬物療法では低血糖、体重減少、転倒などの有害事象に注意して薬剤を使用することが大切である。また、フレイルの患者では、低血糖を避けるために柔軟な血糖コントロール目標を設定することが必要となる。
 2016年に日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会はこうした認知症やフレイル・ADL低下を考慮した「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」を発表した。さらに、2017年5月に高齢者糖尿病の治療向上のために、「高齢者糖尿病診療ガイドライン2017」を発表することになった。

<< 前のセミナーへ セミナーTOPへ