先輩方からのメッセージ

飯塚 あい

飯塚 あい (いいづか あい)

東京都健康長寿医療センター研究所
社会参加とヘルシーエイジング研究チーム 研究員

老年内科を志したきっかけ

私は埼玉医科大学を卒業後、初期臨床研修・後期臨床研修を東京都健康長寿医療センターで行いました。学生時代から高齢者の認知症予防や進行抑制に関する研究に取り組みたいという思いがあり、研究所が併設され、自らの目指す研究に取り組める環境が整っている点が大きな決め手となりました。大学医局に所属する選択肢もありましたが、当時のセンター長の「病気を治すだけでなく、幸福をもたらす医療・研究を提供する」という言葉に深く感銘を受け、ここで老年医学をしっかり学ぼうと決意しました。
また、幼い頃から祖母と同居し、祖母の影響を受けて囲碁を始めたことで、世代を超えて人と交流できたことから、高齢者が身近な存在でした。中学・高校時代には母が勤務する介護施設でボランティア活動にも参加し、身体機能や認知機能が低下した方と向き合う機会もありました。そうした経験の積み重ねが、老年医学を志すきっかけになったのだと思います。

実際に老年医学を学び、実践して感じた魅力や学び・現在の診療内容や取り組み、日々感じるやりがい

老年医学は臓器別診療にとどまらず、生活背景や価値観、生き方までも視野に入れる、まさに人を診る診療科です。他の診療科でも患者に寄り添う姿勢は求められますが、老年医学ではそれが診療の中心となります。症状や検査結果だけでなく、どのような生活を望むのか、ご本人やご家族が何を大切にしているのかといった想いをしっかりと聞き、医療と生活を統合して考える姿勢が必要です。さらに、医療だけでは完結せず、多職種との協働や社会制度との連携を通じて課題解決に取り組める点も、老年医学の醍醐味だと感じています。
決して容易な道ではありませんが、生活の質が改善し、患者さんが「自分らしく過ごせるようになった」と笑顔を見せてくださる瞬間に、この分野を選んで良かったと実感します。現在は研究を主軸としており、高齢者の身体面だけでなく、メンタルヘルス、社会的支援、地域連携、生活のしやすさに加えて、「生きがいを見出し、自分らしく暮らす」という視点も取り入れ、幅広い研究に取り組んでいます。日々の生活に直結するテーマが多く、医療関係者だけでなく、社会学や心理学をはじめとした多様な専門分野と連携して研究が進められる点も、老年医学の大きな魅力だと考えています。

後輩へのメッセージ

超高齢社会にある現在、高齢者を総合的に診ることができる老年医学の重要性は今後さらに高まります。一つの疾患が全身に波及することも珍しくなく、臓器別医療だけでは対応できないケースも多いです。患者の多くが高齢者である現状を踏まえると、病院勤務・開業にかかわらず、すべての医師にとって学ぶ価値のある領域と言えます。自分自身もいずれ高齢者になりますから、避けては通れない学問でもあります。研究においても、疾患だけでなく生活背景や社会とのつながりまで視野を広げられ、他分野の研究者と協働することで新たな発見が生まれます。老年医学は患者さんの人生に深く寄り添えるだけではなく、自らの人間的成長にも影響を与えてくれる分野だと思っています。ぜひ多くの方にこの魅力に触れていただき、共により良い高齢者医療を築いていける仲間となってくださることを心から願っています。

プロフィール

埼玉医科大学医学部卒業後、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターにて臨床研修を修了。その後、慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室にて博士(医学)を取得。
現在は、東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加とヘルシーエイジング研究チームの研究員、The University of Iowa College of Public HealthのResearch Associateとして、両機関で研究活動を行っている。

※ 2025年12月掲載。所属は掲載当時のものです。