先輩方からのメッセージ

桑波田 聡

桑波田 聡 (くわはた そう)

垂水市立医療センター 垂水中央病院 循環器内科

 「老年科医になってしまった」
 これが私の偽らざる所感です。
 私の場合、特に意志をもって老年科医を目指した訳ではなく、内科医として勤務していたこれまでの25年間で、気がつけば対象となる患者さんが高齢者ばかりになっていた、というのが現実です。

 私は医学部を卒業後、故郷の鹿児島に戻り、鹿児島大学の旧第一内科、現在の心臓血管・高血圧内科に入局しました。医局人事のもとで大学病院や県内の基幹病院に勤務し、2012年に現在勤務している垂水中央病院に着任しました。
 当時から垂水市は鹿児島県の中でも高齢化が進み、人口減少が顕著な地域の一つでした。垂水中央病院はその中で地域の医療を支える医療機関としての役割を担っていましたが、当時はまだ当院の他にも病院があり、開業医の数も今よりも多かったです。時を経て、開業医の高齢化による閉院や病棟閉鎖、病院の閉院が相次ぎ、当院は二次医療機関でありながら、さらにこれまで開業医が担ってきた一次医療にも裾野を広げざるを得なくなっていきました。

 このような社会的背景の変化を、私たちは手をこまねいて見ていた訳ではありません。むしろ当時の院長であった安部智先生は、地域の医療ニーズを予測し、早い段階から地域医療の重要性を説き、自治体との協力体制を作り、総合診療医、老年科医の教育機関としての体制づくりをしてこられました。残念ながらその安部先生は志半ばの2019年、享年64歳で病気のためご逝去されました。私が老年科医になった経緯には、こういった勤務先の地域の特徴や事情に加え、尊敬する先輩の遺志を引き継がなければならない運命の流れのようなものも感じています。

 2017年より鹿児島大学の大石充教授が中心となり、鹿児島大学と垂水市との共同研究である「垂水研究」がスタートしました。当院もこの研究に協力しており、コホート研究の奥深さを日々実感しています。さらにコロナ禍を経て、垂水中央病院に求められるもの自体も変容し、地域の公衆衛生の拠点としての期待も高まっています。

 老年科医を目指す皆さんにお伝えしたいのは、日本という国全体の高齢化を鑑みるに、これからの診療の対象は、小児科と産科を除くすべての診療科で、患者の多くが高齢者になるということです。つまり、我が国のほとんどの医師が「老年医学」に関わることになるのです。これまでも対象患者の多い分野の研究は進み、社会の関心も寄せられてきました。どうぞ皆さんも気負いなく、専門性を保ちながら老年医学に携わって頂けたら嬉しいです。

※ 2025年11月掲載。所属は掲載当時のものです。