先輩方からのメッセージ
ライフプランとともに歩む老年医学

藤沢 知里 (ふじさわ ちさと)
名古屋大学医学部附属病院 老年内科 病院講師
老年医学の道を選んだのは、祖父の存在があったからです。祖父はもともととても身体の強い人でしたが、晩年には少しずつ弱っていき、今思えば認知症やフレイルの兆候があったのだと思います。当時は家族として違和感を覚えながらも、どうすればよいか分からず、医療機関を受診しても「年齢相応ですね」と言われるばかりでした。「何かしらの薬やアドバイスがもらえたら、家族として少し楽になれたのでは」と感じたことは、今でも記憶に残っています。
そうした経験から、「高齢の方やそのご家族に、少しでも安心できる医療を届けたい」と思うようになり、老年内科を志しました。大学院時代には緩和ケア専従医として働く機会もあり、老年医学だけでなく緩和ケアについても学ぶことができました。現在は大学病院での臨床に加え、地元の病院で物忘れ外来などを担当しながら、地域に根ざした実践的な医療にも携わっています。
大学院時代にシカゴ大学の老年内科・緩和ケア科へ留学させていただいたことも、大きな転機となりました。そこでは、女性医師に限らず、多くの医療者やコメディカルの方々が家庭やプライベートを大切にしながらも、情熱を持って医療と向き合っている姿がとても印象的でした。「仕事も生活も、自分らしく楽しむのは決してわがままではない」と実感し、私も自分のライフプランに沿った働き方を大切にしたいと思うようになりました。
現在は、医局長や教授と相談しながら、ライフステージに応じた柔軟な働き方を取り入れつつ、診療・研究・教育に携わっています。「私ができることは引き受ける、でもできないことはできない」と、心苦しく思う場面もありますが、そんな私に融通をきかせてくれる職場には日々感謝しています。そして忙しい毎日の中でも、「学び続ける姿勢」だけは忘れないようにしています。老年医学のフィールドは非常に広く、多様な側面から患者さんを支える視点が求められるため、飽きることがありません。
これから老年内科を志す皆さんへ
今の日本は、世界に類を見ないほど高齢化が進んでいます。高齢者の数が多すぎる、負担が重すぎると感じる方もいるでしょうし、「高齢者を診るのは面倒だ」と思う人がいるのも自然なことだと思います。私自身、その気持ちはよく理解できます。ただ、私たちの仕事には、介護するご家族の負担を少しでも軽くすること、そして人生の最終段階を穏やかに迎えていただくためのお手伝いをすることも含まれています。
この高齢者が多い今の日本に生まれたことを逆手にとって、今この時代、この場所でしかできない研究や臨床に取り組んでみませんか。よく勘違いされますが、老年内科は高齢の方を盲目的に延命させることを目的とした科ではありません。高齢となった両親や祖父母について悩む多世代のご家族、地域に住む高齢者の対応に困る地域住民の方、独居や老々介護で将来が不安な高齢者、自分が自立できなくなった時の話し合いをしっかりしているうちからしたい、など老年内科は、様々な世代の要望に応じ、主に人生の高齢期に焦点をあてることにより社会全体の諸課題に取り組む科です。社会的にも医療的にも、やるべきこと、できることはたくさんあります。ぜひ、自分自身のライフプランに沿った形で、老年医学とともに歩む人生を選んでいただけたら嬉しく思います。
プロフィール
藤沢 知里(ふじさわ・ちさと)
名古屋大学医学部附属病院 老年内科 病院講師
学歴
- 2010年3月
- 三重大学医学部医学科卒業
- 2015年2月
- University of Chicago Geriatric and Palliative Care Visiting Educator
- 2020年3月
- 名古屋大学大学院修了
職歴
国立災害医療センター、名古屋逓信病院、鉱仁病院、聖霊病院などを経て、2022年より現職。
※ 2025年11月掲載。所属は掲載当時のものです。


