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老年病専門医とは

 内科専門医取得後2年目の若手医師の外来診療風景です。
 患者さんは85歳の高齢女性で、認知機能障害、視力障害、難聴があり、息が切れる、時々胸が痛む、背中と膝が痛い、足がむくむ、もの忘れがだんだんひどくなるなど漠然とした訴えが多く、2型糖尿病、高血圧症、骨粗鬆症、慢性閉塞性肺疾患、陳旧性心筋梗塞(PCI後)、心房細動に伴う慢性心不全状態にある患者の定期的な診療を行っています。診療録に血圧、脈拍、胸腹部の聴打診所見などの理学所見を記載し、ガイドラインに基づいて各疾患の治療法を選択し、「これがあなたにとって考えうる最良の治療です」と説明しています。

 内科専門医の知識に基づくこのような診療は、一面では正しいかもしれませんが、各臓器疾患を集合的に診ているだけであり、必要以上の医療を行っている可能性があります。このような治療を実践するためには、何回もの検査が必要でしょうし、投薬数はゆうに10剤を超えるでしょう。ましてや認知機能に問題があれば、正しく服薬できているかどうかわかりません。むしろ患者が心配なのは、むくみがあって足が重く、買い物に行くのが難しいと感じていること、時々胸が痛くなるが放っておいてよいのかどうか不安なこと、これからも自分で自分のことができるのか不安に感じていることかもしれません。

 このような多病で生活に不安を抱える高齢者を診ることは、臓器別専門医では難しく、内科専門医であっても経験不十分です。このような患者を診るうえで必要なのは科学的根拠に基づく医療よりむしろ、病気と上手に付きあいながら本人が抱える健康問題に対して適切に指導ができる能力です。そのためには認知機能障害、糖尿病、高血圧症、高脂血症、骨粗鬆症、変形性脊椎症・膝関節症、慢性閉塞性肺疾患、陳旧性心筋梗塞(PCI後)の慢性心不全の多疾患を、優先順位をつけて包括的に管理できること、それに基づいて最小量で最大の効果を得るための投薬を行うこと、患者のQOLに配慮した治療が行えること、生活状態を踏まえて疾患指導が行えることです。これを実践するためには、メディカルスタッフと協働して高齢者総合機能評価(CGA)と老年症候群の評価を行い、日常生活を送る上での問題点を把握しておく必要があります。そして評価をもとにメディカルスタッフと共に現実的な医療、看護、介護プランを提供する必要があります。これが実践するのが老年病専門医です。

 図は老年病専門医の目指す専門的医療のイメージを示しています。