65歳以上の成人で接種を検討すべきワクチン

*ワクチンの有効性:ワクチンを接種しなかった者あるいは追加接種をしなかった者の発病率や重症化率を基準とした場合、接種者の発病あるいは重症化が相対的に何%減少したかをみる指標

インフルエンザ

ワクチンの種類 対象 接種方法
不活化ワクチン 65歳以上 定期接種
(60歳以上で基礎疾患有する一部も定期接種)
皮下注射
  • 高齢者は年1回接種が基本

解説

  • シーズンによる差異があると推定されるが、本邦の観察研究においてもインフルエンザの発症と重症化に対する有効性が示されている1, 2)

肺炎球菌

ワクチンの種類 対象 接種方法
23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン
PPSV23
(ニューモバックス®)
65歳 定期接種
他の年齢や2回目以降の接種は任意接種
皮下注射
  • 5年以上の間隔で2回目接種可
  • 結合型ワクチン(特にPCV13やPCV15) 接種後1年から4年以内のPPSV23接種も勧められる3)

解説

  • ワクチン血清型の侵襲性肺炎球菌感染症への有効性がみられる4)
  • 本邦の多施設前向き観察研究5)で、ワクチン血清型の肺炎球菌性肺炎への有効性は65歳以上で33.5% (95%CI 5.6 - 53.1)であった。
  • ワクチンの有効性は、接種後5年で減弱する。
ワクチンの種類 対象 接種方法
沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン
PCV20(プレベナー20®)
任意接種 筋肉内注射
  • PPSV23接種歴のある者も1年以上あけてPCV20の接種可3)
  • PCV20接種後、PPSV23を追加で接種する必要は乏しい

解説

  • 海外の大規模ランダム化比較試験6)で、肺炎球菌結合型ワクチンPCV13(プレベナー13®)について、ワクチン血清型の肺炎球菌性肺炎への有効性は45.6% (95%CI 21.8 - 62.5)であった。PCV20は、PCV13と同等の免疫原性が確認されていて3)、同様の有効性があると推定される。
  • 本邦の肺炎球菌性肺炎の血清型をPPSV23と同様によくカバーしている。
  • 直接比較した研究はわずかであるが7)、予防効果はPPSV23より長く持続すると推定される。
ワクチンの種類 対象 接種方法
沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン
PCV15
(バクニュバンス®)
任意接種 筋肉内注射
  • 接種から1年あけてのPPSV23の追加接種が勧められる1)

解説

  • PCV13と同等の免疫原性が確認されている1)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)

ワクチンの種類 対象 接種方法
新型コロナウイルスmRNAワクチン
(コミナティ®、スパイクバックス®、ダイチロナ®)
65歳以上 秋冬1回 定期接種
(60歳以上で基礎疾患有する一部も定期接種)
他の期間の接種は任意接種
筋肉内注射
  • 定期接種は年1回
  • 前回のSARS-CoV-2ワクチンの接種から少なくとも3ヵ月経過した後に接種可
  • 他のワクチンとの接種間隔に制限はない

解説

  • コミナティ®、スパイクバックス® の初回免疫では、90%以上の非常に高い有効性が示された8, 9)
  • しかし、海外の観察研究において、3回接種に対する4回目接種の接種後1か月までの感染予防の有効性は60%台で、3か月目には減弱した。同研究で、重症化予防への有効性は、2か月間70%以上で持続した10)
  • 5回目以降の追加接種の有効性については、重症化予防の効果も含めて、現時点で十分なデータがあるとはいえない11)
  • ダイチロナ®は、スパイク蛋白の受容体結合部位のみをコードしたmRNAを使用し、追加接種でコミナティ®と比較して中和抗体価上昇が非劣性であった。副反応も同程度であった。
  • mRNAワクチン接種後の新規疾病の発症や既存疾患の悪化のケースレポート(因果関係は確定できない)は多くあるが、重篤な有害事象が高い率で発生したことを明確に示すコホート研究はない。
ワクチンの種類 対象 接種方法
組換えコロナウイルスワクチン
(ヌバキソビッド®)
65歳以上 秋冬1回 定期接種
(60歳以上で基礎疾患有する一部も定期接種)
他の時期の接種は任意接種
筋肉内注射
  • 追加免疫での定期接種は年1回
  • mRNAワクチン接種歴のある者の追加接種として接種可
  • 通常、前回のSARS-CoV-2ワクチンの接種から少なくとも6ヵ月経過した後に接種することができる。
  • 他のワクチンとの接種間隔に制限はない。

解説

  • 組換えタンパクワクチンの初回免疫について、mRNAワクチンと同様に90%以上のCOVID-19発症予防効果が確認された12)
  • 発熱などの全身性副反応はmRNAワクチンと比較して軽いことが示唆された13)

注)そのほか、mRNAレプリコンワクチンであるコスタイベ®が承認されている。

帯状疱疹

ワクチンの種類 対象 接種方法
組換え帯状疱疹ワクチン
(シングリックス®)
50歳以上 任意接種 
地域によっては助成あり
(免疫が低下している場合には18歳以上)
筋肉内注射
  • 2から6か月の間隔をあけて2回接種する
    (免疫が低下している場合には1か月の間隔でも接種可)
  • 生ワクチンの接種歴がある者でも接種可

解説

  • 国際的なランダム化比較試験(平均追跡期間 3.2年)で帯状疱疹の発症に97.2%(95%CI 93.7-99.0)の有効性が示された14)
  • 80歳以上の高齢者でも91.4%(95%CI 80.2-97.0)の有効性が確認された15)
  • 有効性は10年間持続する(10年後でも70%以上の有効性がみられた16))。
  • 接種後1-2日の発熱や倦怠感などの全身性副反応が比較的多い。
ワクチンの種類 対象 接種方法
乾燥弱毒生水痘ワクチン 50歳以上 任意接種
地域によっては助成あり
明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する者及び免疫抑制をきたす治療を受けている者には接種してはならない
皮下注射
  • 1回接種

解説

  • 4年間のランダム化比較試験で帯状疱疹の発症に51.3% (95%CI 44.2-57.6) の有効性が示された17)
  • 有効性は7から8年後に大きく減弱すると推定される18)
  • 副反応は軽い。

RSウイルス

ワクチンの種類 対象 接種方法
組換えRSウイルスワクチン
(アレックスビー®、アブリスボ®)
60歳以上 任意接種 筋肉内注射
  • 1回接種

解説

  • 国際的なランダム下比較試験で、RSウイルスによる下気道感染の予防効果および重症化の予防効果が示されている19, 20)
  • アレックスビー®はアジュバントを含むワクチンで、アブリスボ®はアジュバントを含まないワクチンであるが、有効性等での両ワクチンの比較研究はない。
  • 2シーズン目までの有効性は報告されているが、さらなる長期効果の持続についてはまだ評価されていない21)

参考文献

  • 1) Vaccine. 40: 5023-5029, 2022.
  • 2) Influenza Other Respir Viruses. 15: 293-314, 2021.
  • 3) 日本呼吸器学会 感染症・結核学術部会ワクチンWG/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会 65 歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第6 版 2024 年9 月6 日)
  • 4) Emerg Infect Dis. 26: 2378-86, 2020.
  • 5) Lancet Infect Dis. 17: 313-21, 2017.
  • 6) N Engl J Med 372:n1114-1125,2015
  • 7) Sci Rep. 11: 15948, 2021.
  • 8) N Engl J Med. 383: 2603-15, 2020.
  • 9) N Engl J Med. 384: 403-416, 2021.
  • 10) BMJ. 377: e071113, 2022.
  • 11) Age and Ageing 52: 1–5, 2023.
  • 12) N Engl J Med. 385: 1172-1183, 2021.
  • 13) J Infect Dis. 230: e496-e502, 2024.
  • 14) N Engl J Med. 372: 2087-2096, 2015
  • 15) N Engl J Med. 375: 1019-1032, 2016
  • 16) Open Forum Infect Dis. 9: ofac485, 2022.
  • 17) N Engl J Med 352: 2271-2284, 2005
  • 18) Clin Infect Dis. 60: 900-909, 2015.
  • 19) N Engl J Med. 388: 595-608, 2023.
  • 20) N Engl J Med. 388: 1465-1477, 2023. 
  • 21) Clin Infect Dis. 78: 1732-1744, 2024.

日本老年医学会 感染症対策・ワクチン療法小委員会作成(2024年10月)
日本内科学会および関連学会の『医学系研究の利益相反(COI)に関する共通指針』(2024年4月更新版)に沿った同小委員会委員の過去3年間の利益相反について
開示該当項目:
講演料(アストラゼネカ株式会社, グラクソ・スミスクライン株式会社, ファイザー株式会社)
奨学(奨励)寄付⾦(マルホ株式会社, サヴィッド・セラピューティックス株式会社)