ADLの評価法

1) 手段的ADLと基本的ADL

 日常生活活動度(Activities of daily living;ADL)とは、人が生活を送るために行う活動の能力のことである。手段的ADLとは高次のADLで買い物、食事の準備、服薬管理、金銭管理、交通機関を使っての外出などのより複雑で多くの労作が求められる活動を意味する。基本的ADLとは移動、階段昇降、入浴、トイレの使用、食事、着衣、排泄などの基本的な日常生活活動度を示す。糖尿病患者は手段的ADLが1.65倍、基本的ADLが1.82倍低下しやすい1)

2) 手段的ADLと基本的ADLの質問票

 手段的ADLの評価は表1のLawtonの尺度,老研式活動能力指標,DASC-21の一部の質問などで行うことができる。著しい高血糖により尿失禁がおこることもあるので、トイレ使用の評価は高血糖の治療後に慎重に評価を行う。
 基本的ADLの詳細な評価は表2のBarthel index, Katz Index, DASC-21の一部の質問などで行うことができる。

表1 手段的ADLの質問票
  1. 1) Lawtonの尺度電話をする能力、買い物、食事の準備、家事、洗濯、移動の形式、服薬管理、金銭管理の項目からなる2)
  2. 2) 老研式活動能力指標手段的ADL(交通機関を使っての外出、買い物、食事の準備、請求書の支払いなど)、知的能動性(書類を書く、新聞を読む、本・雑誌を読むなど)、社会的役割(友人への訪問、家族や友人からの相談、病人のお見舞いなど)の13項目からなる3)
  3. 3) DASC-21認知症のスクリーニングのための21の質問の中に、手段的ADLの買い物、交通機関を使っての外出、金銭管理、電話、食事の準備、金銭管理が含まれている4)
表2 基本的ADLの質問票
  1. 1) Barthel Index整容、食事、排便、排尿、トイレの使用、起居移乗、移動、更衣、階段、入浴の10項目からなる5)。20点満点で採点する方法と100点満点で採点する方法とがある
  2. 2) Katz Index:入浴、更衣、トイレの使用、移動、排尿・排便、食事の6つの領域 のADLに関して自立・介助の関係より、AからGまでの7段階 の自立指標という総合判定を行う6)
  3. 3) DASC-21認知症のスクリーニングのための21の質問の中に、基本的ADLの入浴、更衣、排泄、整容、食事、移動が含まれている3)

参考文献

  1. 1) Wong E et al, Lancet Diabetes Endocrinol 1: 106–14, 2013.
  2. 2) Lawton MP, Brody EM. Gerontologist 9:179-168,1969.
  3. 3) Koyano W, et al. Arch Gerontol Geriatr. 1991 13:103-16,1991.
  4. 4) 粟田ら:老年精神医学雑誌26:675-686, 2015.
  5. 5) Mahoney F. Barthel D. Md Med J 14:61–65,1965.
  6. 6) Katz S et al. JAMA 185:914-919,1963.