「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」について
高齢者糖尿病の治療向上のための
日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会
超高齢社会を迎え、高齢者糖尿病は増加の一途を辿っている。高齢者には特有の問題点があり、心身機能の個人差が著しい。それに加え、高齢者糖尿病では重症低血糖を来しやすいという問題点も存在する。重症低血糖は、認知機能を障害するとともに、心血管イベントのリスクともなり得る。このような現状を背景に、2015年4月、「高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会」が設置された。合同委員会は、「高齢者糖尿病診療ガイドライン」の策定を目指しているが、まず高齢者糖尿病の血糖コントロール目標に関して議論を開始した。
本邦のJ-EDIT研究や、アメリカ糖尿病学会(ADA)とアメリカ老年医学会(AGS)との高齢者糖尿病に関するコンセンサスレポート、国際糖尿病連合(IDF)のManaging Older People with Type 2 Diabetes: Global Guideline、および種々の論文を参考に議論を重ね、表に示す「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」を作成した。
基本的な考え方は、以下の通りである。
- ①血糖コントロール目標は患者の特徴や健康状態:年齢、認知機能、身体機能(基本的ADLや手段的ADL)、併発疾患、重症低血糖のリスク、余命などを考慮して個別に設定すること。
- ②重症低血糖が危惧される場合は、目標下限値を設定し、より安全な治療を行うこと。
- ③高齢者ではこれらの目標値や目標下限値を参考にしながらも、患者中心の個別性を重視した治療を行う観点から、表に示す目標値を下回る設定や上回る設定を柔軟に行うことを可能としたこと。
合同委員会
日本糖尿病学会
- 代表委員
- 羽田 勝計(旭川医科大学内科学講座 病態代謝内科学分野 客員教授)
- 委員
- 稲垣 暢也(京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学教授)
- 委員
- 鈴木 亮(東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 講師)
- 委員
- 綿田 裕孝(順天堂大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科 教授)
日本老年医学会
- 代表委員
- 井藤 英喜(東京都健康長寿医療センター 理事長)
- 委員
- 荒木 厚(東京都健康長寿医療センター 内科総括部長)
- 委員
- 櫻井 孝(国立長寿医療研究センター もの忘れセンター センター長)
- 委員
- 横手幸太郎(千葉大学大学院医学研究院 細胞治療内科学 教授)